春季カタル アレルギー性結膜炎の重症型
【目次】
春季カタルとは
アレルギー性結膜炎の重症型で、結膜の増殖性変化が特徴です。
小学校低学年くらいから中学生くらいまでの男児に多く発症します。
成長するにしたがって症状が軽くなります。(自然寛解)
基本的に1年中症状が出ますが、春や秋に悪化して、冬に軽くなるような季節変動があります。
春季カタルの原因
ハウスダストやダニ、カビ、花粉や動物のフケなどが原因となります。
湿疹や喘息などの症状を持っていたり、アトピー体質であったり、アトピー性疾患の家族歴があることも原因と考えられています。
春季カタルの症状
目のかゆみが強く、充血、涙、分泌物を伴います。
角膜に障害が及ぶと刺激症状が強くなり、異物感、目の痛み、まぶたの痙攣、強いまぶしさで目が開けにくくなることもあります。
症状が進行して角膜がにごってしまうと、視力低下につながります。
症状は1年中発生しますが、春や秋に悪化し、冬に軽くなる傾向があります。
春季カタルの検査・診断
《目の様子で診断する》
トランタス班や堤防状隆起(眼球型)
目の表面に強い充血が見られ、黒目の周りが腫れて盛り上がってきます。
腫れている部分に白いはん点(トランタス班)が見られます。
石垣状乳頭増殖(眼瞼型)
上まぶたの裏側に、小さな石畳のような形のコブができます。
この乳頭組織から放出された物質が、角膜にダメージを与えます。
時には角膜にプラークと呼ばれる白っぽい沈着物がたまり、それが視力障害を起こすこともあります。
《涙や血液で診断する》
血液中に総I g E抗体の増加、抗原特異的Ig E抗体陽性が見られます。
春季カタルの治療法
かゆみ、灼熱感、刺激感などの症状は、冷湿布や生理食塩水で対処します。
また、防腐剤の入っていない人工涙液をたっぷりと使用することができます。
このような方法で症状が大幅に緩和された例が、多数報告されています。
重症度に応じた春季カタルの治療法
《抗アレルギー点眼液》
抗アレルギー点眼薬は軽症の春季カタルである程度の効果をもたらします。
パタノール点眼液 1日4回点眼
アレジオン点眼0.1% 1日2回点眼
《ステロイド点眼》
ステロイドは、春季カタルの悪化を抑えるのに非常に有効です。
しかし、副作用(白内障、緑内障、ヘルペス感染)があるため、長期的な使用には適していません。
ステロイドによる白内障や緑内障など、慢性的なステロイド使用による合併症が、患者の最大20%に見られると報告もされています。
維持療法として抗アレルギー点眼液を使用し、悪化した時にはステロイド外用剤のパルス療法を行うのが一般的です。
《免疫抑制剤点眼液》
春季カタルへの有効性がみとめられた、シクロスポリンAとタクロリムスを使った点眼薬が新たに開発されました。
シクロスポリンAとタクロリムスはT細胞の活性化を抑制する効果があります。
パピロックミニ点眼薬0.1%
パピロックミニ点眼薬0.1%は、防腐剤を含まない1回使い捨て容器に入った水性点眼薬で、1回1本、1日3回点眼します。
シクロスポリン点眼薬0.1%は高濃度ステロイド点眼薬と比べ、効果の発現はゆっくりですが、1ヵ月後には重症の角結膜所見が改善し、
ステロイド点眼薬併用例でもステロイド点眼薬の減量、中止が可能となっています。
注意すべき副作用:
眼刺激感 、 眼そう痒感 、 角膜糜爛 、 角膜潰瘍 、 流涙 、 眼瞼炎 、 眼痛 、 結膜充血 、 ヘルペス性角膜炎 、 麦粒腫
タリムス点眼液0.1%
タリムス点眼薬0.1%は、懸濁点眼薬で1日2回点眼します。
タリムス点眼0.1%は、早期に症状の改善が得られ、ステロイド抵抗性の重症例に対しても有効な治療薬です。
パピロックミニ点眼液と比べ効果がより強いというメリットがありますが、異物感、熱感、違和感などの副作用は若干多くなります。
注意すべき副作用
眼部熱感 、 眼刺激 、 流涙増加 、 眼異常感 、 眼異物感 、 眼違和感 、 眼精疲労 、 眼乾燥 、 眼脂 、眼痛
副作用の発現率(市販後調査)は、
パピロミックミニ点眼液(7歳以下) | 1.46% |
タリムス点眼液(6歳以下) | 8,77% |
となっています。
春季カタルの重症度に応じて、パピロミックミニ点眼液かタリムス点眼液のどちらかを選択しています。
《春季カタルの外科的治療》
抗アレルギー点眼液、免疫抑制剤点眼液、ステロイド点眼液の3種を併用してもコントロールできない場合があります。
このときは上まぶたの結膜下にステロイド注射をしたり、ステロイドの内服や巨大乳頭の外科的切除を検討します。
春季カタル患者が外科的アプローチを必要とするのはまれです。
重度の機械的眼瞼下垂や、角膜の変化を伴う大きく粗い乳頭がある場合は、巨大乳頭の切除を検討することがあります。
重度で症状の改善が見られない場合には、角膜の再上皮化を可能にするために、角膜プラークの外科的除去をおこないます。
春季カタルの予後(見通し)
春季カタルは思春期の到来とともに自然に回復する傾向があります。(自然寛解)
自然軽快傾向が強いため予後の報告は多くないですが、2000年に発表された論文では、
春季カタルの予後
完全に回復 | 29,8% |
症状の改善 | 35.4% |
変わりなし | 31.7% |
悪化 | 2.7% |
と報告されています。
治癒が1/3、改善が1/3、大人になっても治らないケースが1/3という割合です。
治療しないとかなり重症化して、角膜に後遺症が残り、視力が低下したままになることもあります。
目が赤くて、かゆい・・・症状が強く治りにくい
目をよく見ると、
春季カタルです。
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