秋の花粉症(アレルギー性結膜炎)
日本眼科学会 眼科専門医
加藤光男
今回は秋の花粉症(アレルギー性結膜炎)についてのお話しです。
秋の花粉症(アレルギー性結膜炎)
秋にも花粉が原因でおきるアレルギー性結膜炎があります。
代表的な秋の花粉症を紹介しましょう。
アレルギー性結膜炎には,「通年性アレルギー性結膜炎」と「季節性アレルギー性結膜炎(花粉症)」があります。
「通年性アレルギー結膜炎」は目の表面にほこりやカビ、ダニなどが付着することが原因で引き起こされます。年間を通して発症します。
「季節性アレルギー性結膜炎」は季節が限定される結膜炎です。主に花粉が原因です。
アレルギー症状を引き起こす主なアレルゲンとしては、スギやヒノキなどの春の花粉症がよく知られています。
秋の花粉症の原因
代表的な花粉は、
ブタクサ花粉
秋に河川敷や公園、道端などでよく見かける植物。「キク」のように黄色い花を咲かせます。
ブタクサは、背が低い植物なので花粉の飛散距離は数百メートルほどです。夏から秋にかけての花粉飛散時期は、生えている場所に近づかないことをオススメします。
ヨモギ花粉
ブタクサ同様河川敷や道端などでよく見かける植物です。
ヨモギもち(草もち)の材料としても使用されています。繁殖力が強く、刈り取っても根が地中に残っていると、その根から新芽が出てきます。
こちらも背が低く、飛散距離も数百メートルです。飛散時期は生息している場所を避けましょう。
イネ科の花粉症
夏の花粉症の代表的なイネ科の植物は4月から9月頃まで花粉を飛散させます。秋の初めはイネ科の花粉症もまだ続きます。
スギ花粉症
温暖化の影響で秋に花粉を飛散させるスギ。スギ花粉はブタクサやヨモギと違い、背の高い植物なので花粉の飛散距離は数十~数百キロと言われています。
アレルギー性結膜炎の症状
アレルギー性結膜炎にかかると、まぶたの裏側と白目の部分を覆う粘膜である結膜に炎症が起きす。
主な症状としては
・目のかゆみ
・白目の充血
・目がゴロゴロする。異物感がある
・白く粘性のある目やにが出る
・まぶたの腫れ
などがあります。
目やに、かゆみ、涙が出る、充血、ゴロゴロする(異物感)など
2つ以上の症状が現れたらアレルギーによる結膜炎である可能性が高いと言えるでしょう。
目のかゆみは耐えられないものですが、かゆいからといってゴシゴシとこすってはいけません。
角膜(黒目)を覆う上皮の一部に傷がついて剥がれる「角膜上皮びらん」になることがあるからです。
目の周囲の皮膚はとても薄くデリケートですので、かゆくても決してかかないように。
かゆみを抑えるには目を冷やすことが有効です。
冷蔵庫で冷やした市販の目薬をさす、冷えたタオルをあてる、涙に近い性質をもつ人工涙液で目を洗い流すのもよいでしょう。
目の花粉症症状を悪化させるドライアイ
近年増えているドライアイやコンタクトレンズ装用も、アレルギー症状を悪化させる要因となっています。
涙の分泌量が少なくなったり、蒸発しやすい質の涙になっているため、バリア機能が弱くなり、抗原が侵入しやすい状態になっているからです。
さらに角膜がこすれる刺激を受けやすく、アレルギー発症時に巨大乳頭ができるリスクが高い状態だといえます。
アレルギー症状が起こる時期はメガネにするか、ワンデイの使い捨てタイプに切り替えることをオススメします。
花粉症の予防
花粉症予防や症状悪化を緩和するには、「花粉を目に付けない」「入ったら洗い流す」ことを意識しましょう。
・花粉情報を調べる
花粉が飛散する2週間ほど前からはじめる『初期療法』が有効です。花粉の飛散情報(pollen)などを参考に花粉の飛散情報を調べましょう。
・花粉が付着しないようにメガネ・マスク・帽子を着用する
コンタクトを使い続けたければ、定期的に眼科の検診を受けて、目の状態をチェックしながら使っていきましょう。
・花粉が付着しづらい素材の衣類を着用する
ツルツル、すべすべした素材のアウターがオススメです。ウールやニットなどは花粉が付着しやすいので、できるだけ避けましょう。外出時にはつばのついた帽子の着用も有効。帰宅時は、花粉をよく払ってから入室しましょう。
・空気清浄機を使う
PM2.5などの有害物質は、アレルギー症状を悪化させることが分かっています。花粉やPM2.5に対応した空気清浄機の活用は有効です。また、乾燥した室内では、花粉が舞いやすくなるので、加湿器などで湿度を保つのも有効でしょう。
・洗眼液を使う
外出時には専用のメガネなどを装着し、自宅に戻ったら目に入ったアレルゲンを洗い流しましょう。その際、水道水はNG。市販されている洗眼液を使いましょう。目の周りを軽く洗ってから使います(メイクも落とします)。
症状がひどくなる前に、症状を</h3>たらすぐに対処することをオススメします。
アレルギー性結膜炎の治療
アレルギー性結膜炎の治療は、点眼薬が中心です。
現在、医療機関で処方されているのは、
・アレルギー反応を抑える抗アレルギー薬
・角膜上皮についた傷を補修するヒアルロン酸
・目の粘膜の主要成分であるムチンを作り出す角膜保護液のジクアス点眼液、ムコスタ点眼液などです。
抗アレルギー薬を中心に、必要に応じてヒアルロン酸やジクアホソルナトリウムが追加処方されます。重症の場合はステロイド配合の点眼薬を使うこともあります。
市販薬で改善しなかった場合でも、眼科を受診すれば複数の処方薬から自分に合ったものを選択できますよ。
ドライアイがあると結膜炎の症状が悪化しやすいため、ドライアイ用の点眼薬を使うこともあります。
鼻の症状で処方される抗アレルギー薬の飲み薬も有効で、重症例では点眼薬+飲み薬で治療を進めます。まぶたの腫れやかゆみには軟膏で対応するといいでしょう。
市販の防腐剤フリーの目薬は品質の点から1カ月以内に使い切ること。使い切れなかったら破棄するようにしましょう。